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健診施設の経営安定のために! 年間5万人の受診者を獲得し…

健診施設の経営安定のために! 年間5万人の受診者を獲得した戦略とコロナ後の健診業界の展望

コラム

健康ブームを背景に、健診施設の新規開業が相次いでいた中でのコロナ禍突入。
ニーズの多様化や業務の複雑化など、健診業界を取り巻く環境は今もめまぐるしく変化しています。こうした状況で健診施設の経営安定のために必要な戦略とはなにか。
大手銀行での法人営業を経て、医療法人の健診事業部長として年間5万人の受診者を獲得する手腕を発揮された株式会社健診ソリューションズ 代表取締役 嶋氏がこれからの業界の展望や、受診者獲得のための施策について解説します。


1.今、健診施設が狙うべきターゲットは?

厚生労働省が公表した2019年度「特定健康診査・特定保健指導の実施状況」によると、40歳以上の人を対象とした特定健康診査の実施率は55.6%。毎年着実に向上していますが、国の掲げる目標値「70%以上」にはまだまだ及びません。

特定健診の実施主体は、健保組合や協会けんぽ、市町村国保などの医療保険者です。保険者別の実施率を見ると、最も高いのは、大企業の会社員とその家族が加入する単一健保組合(81.0%)、次に高いのが公務員などの加入する共済組合(79.5%)となっています。反対に、実施率が低いのは、市町村国保(38.0%)で、とくに大都市部の国保では29.2%にとどまっています。

これを裏付けるように、全国の協会けんぽにおける健診の実施状況(2020年度)によると、健診実施率の全国平均は51.1%にとどまり、中でも東京、大阪といった大都市部がワーストとなっています。(東京:35.4%、大阪:39.1%)全国健康保険協会(令和2年度事業報告書(協会けんぽ2020))

健診受診率を上げるためには、中小零細企業の健診実施率を上げていくことがカギになります。また、経営の安定のためには補助の大きい生活習慣病健診を行うことが必要です。

例えば、大阪府内の協会けんぽ事業者数は約16万社。うち社員10名未満の事業者は約10万社あります。つまり大半が中小零細企業です。一方で協会けんぽの生活習慣病取り扱い健診機関は224で、うち年間受診者1,000名以下にとどまる健診機関は約100施設あると考えています。また、市・区で1施設程度しか対応できる施設がない、生活習慣病健診の取り扱い健診機関がない地域もあるとういうのが現状です。
以上を踏まえると、健診施設が狙うべきターゲットは、協会けんぽ・法人契約であり、生活習慣病健診であるといえます。

2.withコロナ時代に「強い経営」を続けるための戦略

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コロナ禍において、「受診控え」という言葉がよく聞かれるようになりました。
しかし、法人契約での受診者に関しては、必ず受診をする必要があるので、私の所属していた施設では影響はほとんどありませんでした。集団検診ができないことや、密を避けるために枠を減らすなどの対応はありましたが、稼働率を下げない工夫をしたことで、影響は最小限にとどまりました。

人間ドックについては、受診控えやインバウンド需要の減少が打撃になった施設もあるでしょう。私の見解としては、人間ドックの受診者数は減少傾向にあり、今後も大きく増えることはないとみています。インバウンドについてはコロナ後の復活は緩やかにでも期待できるかもしれませんが、言葉の壁や訴訟リスクを許容できるかどうかがカギになると思っています。

3.これからの健診施設に必要な「営業力」

これからは特に、都市部の利便性のよい場所に施設を作るだけでは、集客はできないと考えています。こういった施設での家賃や検査機器の金額を考慮すると、1200人程度の受診者を獲得できないと採算が合わなくなります。この数字を人間ドックだけで達成することは非常に難しいです。
そこで、私が所属していた施設では、法人契約で売上の8割を達成しないと経営は安定しないと考えたため、法人向けの新規開拓営業に力を入れました。医療・健診業界では「営業する」という意識が希薄な部分がありますが、それでは立ち行かないと考えたのです。

もちろん、健診業務に携わるスタッフが営業するわけではありません。中途採用などで、一般企業での営業経験のある人材を採用して営業部隊を作るところからスタートし、DM発送やコールセンターでの電話営業やセミナーなどで集客し、営業の体制を整えました。特に巡回健診は、営業担当が足繁く通うなど地道な活動が必要でしたが、その結果契約をとることができ受診者数と売り上げが向上しました。

コロナ禍になり、セミナー集客や足を使った営業が難しくなれば、一般企業と同じくオンラインセミナーやWEB会議方式での商談も取り入れています。また今後は、WEBにも力を入れる必要があると考えています。インターネットに慣れた世代の受診者にとっては、ホームページ上での丁寧な紹介はもちろん、電話ではなくWEBで健診の予約ができるということは一つのポイントになるでしょう。

4.選ばれる健診施設になるために

先述した、営業力の強化が最も重要ですが、健診施設が付加価値を持つことも重要です。
例えば、ストレスチェックが6年前に始まり、それに伴い産業医の機能強化が法制化しました。その際に産業医とのやりとり(面談記録、高ストレス者対応、長時間労働の報告)の業務効率化のためにクラウドシステムを取り入れ、多くの企業に産業医を紹介することが可能になりました。同時に特定保健指導に力を入れ、当日実施ができるようにしたことも効果が高かったと考えています。

また個別の検査項目で人気が高いのは内視鏡です。内視鏡を希望する受診者は増えていますが、ドクターの確保がネックとなり枠を増やすことが難しい検査項目です。ここを強化できれば、受診者に選ばれやすくなります。ただし、稼働率を下げてしまっては本末転倒なので、バリウム検査とのバランスをとる必要はあると思います。

5.稼働率と業務効率を上げる健診システム

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健診業務を収益化するためには、健診システム導入は欠かせない選択肢です。最適化されたシステムがないと、受診者を効率的にさばくことができず、結果として稼働率が下がり、利益を押し下げます。

また、健診システムの歴史も随分と長くなり、よりブラッシュアップされた機能を備えるようになりました。システムメーカーは長年にわたり健診施設の意見やノウハウを取り入れて開発を続けているので、健診システムには効率化された業務フローが内蔵されています。さらに、健診システム本体だけでなく、周辺のシステムもインターネットを介して連携することで漏れやミスを防ぐことができるようになりました。
これからは、成熟した健診システムに施設の運用を合わせることで、業務を効率化することが可能になると考えています。

6.まとめ

今後ますます激しくなる受診者の獲得競争を有利に運ぶためには、営業力や受診者に選ばれるための付加価値が必要です。
健診施設の生き残りのためには、業務の効率化により、生み出される利益や人的リソースを営業活動や、受診者獲得の施策に振り分けていくという発想が必要になると考えています。


◆著者プロフィール

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株式会社健診ソリューションズ 
代表取締役 嶋 善彦氏

・昭和52年 三和銀行(現:三菱UFJ銀行)入行。
以降20年に渡り、新規取引先の開 拓・既存取引先との取引拡充に従事。主要支店での支社長を歴任。
・平成21年10月に医療法人朋愛会へ業務出向し、1年後に同会に転籍。
朋愛病院で健診事業部長に就任し巡回健診事業の新規開業に尽力。
※令和33月期:大型バス8台で年間受診者11万人。
・平成284月 施設型の淀屋橋健診プラザを新規開設。
※令和33月期:受診者5万人
・令和41月 医療法人朋愛会退職
・令和43 株式会社健診ソリューションズ 開業 代表取締役に就任。

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