前半のコラムでは、採用面接の準備とその重要性についてお伝えしました。後半のコラムでは、面接とその後について、ポイントをお伝えします。採用面接は準備がすべて、と言っても過言ではありません。そのため、準備がしっかりとできていれば、採用面接以降はスムーズに進むかと思います。
採用面接の進め方
さて、基本的な採用面接の流れですが、以下のようになります。
・応募者お出迎え
↓
・面接場所ご案内、履歴書預かり、アンケート渡し
↓
・アンケート記入(15分程度)
↓
・面接開始
↓
・面接終了
↓
・応募者お見送り
ここでの最大のポイントは「アンケート」です。採用後のミスマッチをなくすために、条件の確認はもちろん、応募者の希望や考えなどを書いてもらうものです。だいたい15分くらいのアンケートを用意することで、その時間に履歴書のチェックができます。職歴の年数、学歴と職歴のつながり、履歴のストーリー性がありそうかどうか、気になることを探して質問の準備をするなど、アンケート記入の時間を使って、採用面接の最終準備ができます。ぜひ貴院独自のアンケートを作成して、面接時に使用してみてください。職種ごと、雇用形態ごと、それぞれに作成するのが基本ですが、常勤とパート同時募集している際は、どちらも入れて作成して、常勤で不採用でも、パートで採用となったときに、入職されるかどうか、という話もしやすくなります。
採用面接の5つのポイント
ここで、採用面接の5つのポイントをお伝えします。
- アンケートを用意して、記入してもらう(その間に履歴書のチェックができます)
- 現状→未来→過去→志望動機の順に質問する
ストーリーに無理がないか確認するには、この順番で質問していきましょう(いきなり志望動機を聞くと「暗記してきた答え」になることが多いからです) - できるだけ早く名前を入れて呼ぶ(「●●さんは、・・・なんですね」などを早く入れて呼ぶと、応募者との関係性づくりができ、場が温まります)
- 可能であれば複数で(男女で行うのが望ましいです)
- 最初と最後は答えやすい質問、穏やかな質問で
(突っ込んだ質問は、途中で。終わり良ければ総て良しです)
面接の冒頭に、答えにくい質問があれば「お答えできません」とおっしゃってください、と予告するのも、いろんな質問に答えてもらうために大切な質問です。また、質問をする、答えをもらう、さらに質問で掘り下げると、本音が出てきやすくなります。単に質問する、答えるでは、模範解答で、あるいは準備してきた答えで対応できてしまうからです。
刑事コロンボや、名探偵コナンになった気分で、掘り下げていきましょう。最初はたどたどしくなるかもしれませんが、面接官も練習次第です。
採用面接時のNG質問集
採用面接の準備が大切なことを繰り返しお伝えしておりますが、聞いてはいけない質問内容があるので、準備しておかないと、ついうっかりということもあります。口コミで「あそこの面接行ったら、こんなこと聞かれて嫌だった」など、悪い評判につながり、応募者が減る可能性もでてきます。応募者の適性・能力に関係ないものはNGだと思ってください。
- 本籍・出生地に関する質問
「あなたの生まれた町について教えてください」
「あなたの本籍地はどこですか」
- 家族に関する質問
「あなたのお父さんの職業は何ですか」
「転校の経験はありますか」
「ご両親が離婚されているようですが、理由は何ですか」
「お母さんはシングルマザーですか」
- 住宅状況に関する質問
「あなたの住んでいる地域は、どんな環境でしたか」
「持ち家ですか、マンションですか」
- 思想・信条に関わる質問
「よく読む本(新聞)はなんですか」
「尊敬する人は誰ですか」
「●●教を信じていますか」
「●●党について、どう思いますか」「どの政党を支持していますか」
「あなたの人生観について教えてください」
「社会運動に参加したことがありますか」
- その他、プライバシーに関わる質問
「彼氏はいますか」
「結婚の予定はありますか」
「出産後も仕事を続ける予定ですか」
このような質問は、採用面接時にはNGとされています。ついうっかり質問することがないように気を付けましょう。また、本人の既往歴(家族の既往歴はNG)についてですが、応募者に対して、過去の病歴や健康状態(既往歴)について質問することは、業務遂行に必要な範囲であれば、一概に違法とはいえません。
しかし、病歴に関する質問をされた応募者の心理面を考慮するならば、口頭ではなくアンケート内での記載を用意するなど、細やかな配慮が必要です。
採用面接後のフォロー
採用面接では、こちらが質問することがメインではありますが、必ず応募者からの質問を受ける時間を作りましょう。聞きにくいことがありそうであれば、助け船を出して、質問しやすいように誘導したり、言い換えたりして、こちらが応募者からの言葉を受け取っている姿勢を出すようにしてください。
採用面接が終わったら、お時間をもらえたことにお礼をお伝えして、お見送りをお願いします。採否の連絡手段、最大いつまでにご連絡するか、などもお伝えするようにします。応募者は結果を「待つ」ことになりますが、「待つ」立場はとても時間が長く感じます。結果が決まったら、あまり遅くならずにお伝えするのがマナーです。採用であれば、その後の流れ(制服合わせ、契約日、入職日など)を予め院内調整をしておきます。現場の受け入れ状況などを無視して、いきなり新人さんが入ってくると、混乱を招くこともありえますので、現場リーダー、先輩、教育担当などの準備のためにも、先に話を通しておきましょう。
不採用であれば、お時間をいただけたことを改めてお礼をお伝えしつつ、ご縁がなかったことをお伝えしましょう。言葉がぶっきらぼうにならないように、丁寧さを心掛けてください。クリニックでは、応募者はご近所さんのことも多く、患者さんや患者さんの友人である可能性があります。不採用の際の対応が良くないと、患者さんや患者さん候補を失うことにもつながります。ご注意ください。
まとめ
ここまで採用面接について、ポイントをお伝えしてきましたので、まとめです。
- 応募者の心理を読んで、戦略を組んだうえで、
しっかりと面接準備を行いましょう。 - 基本的な面接の流れを理解し、
採用者は、温かくお迎えし、
不採用者は、「気持ちよく」不採用になってもらいましょう。
採用する側、採用される側で、上も下もありません。
貴院とあった方とのご縁があることを、お祈りいたします。
ここまでお読みいただきまして、ありがとうございました。
★おまけ★
クリニックの採用力チェックポイントを作りました。20問ありますので、1個5点として、自院の採用力を確認してみてください。
【面接前】
- □ 採用担当者(院長以外で)の名前をオープンにしている
- □ 電話以外の応募受付方法がある
- □ 書類選考をしていない
- □ ハローワーク以外の募集媒体を複数持っている
- □ 給与条件は定期的に見直しを行っている
- □ 自院に合わない方の特徴を把握している
- □ 法人理念または医院理念がある
- □ 新人に対する院内のキーパーソンを把握している
- □ 医院見学を可能にしている
【面接中】
- □ 面接時アンケートがある
- □ 面接時評価シートがある
- □ 複数人で面接を実施している
- □ 扶養内勤務希望者にその条件をしっかりと確認できている
- □ 面接で聞いてはいけない項目を把握している
- □ 全然合わないと感じる方が来ても、丁寧に面接を終了している
- □ ファイルボードなどで履歴書などへのメモを見られないようにしている
- □ 面接の最初に志望動機を聞いていない
- □ 履歴書を見るポイントを押さえている
- □ 面接中、名前を2回以上呼ぶようにしている
【面接後】
- □ 不採用通知をしている
著者プロフィール
田中 健太
株式会社S&Sメディカルコンサルタント 代表取締役社長
2000年3月 京都教育大学 教育学部 欧米言語文化専攻 卒業
1999年3月 株式会社ECC 入社
大学1回生より塾講師、予備校講師として複数の企業に勤務。株式会社ECCでは、非常勤講師で入社し、その後正社員に転換。本部講師人事責任者として、各校舎の講師、事務スタッフなどの採用に従事。採用、育成の面白さに気づき、人事の専門家である社会保険労務士を目指すも、不合格続きで、本格的に採用、育成の仕事を求めて、株式会社ECCを退職。
2009年10月 医療法人hi-mex 入職 医療法人本部責任者(事務長)として、医療機関勤務未経験ながら採用される。医療事務スタッフのサポート(受付、会計、往診同行)を行いながら、医院全般をサポート。その後、分院展開を全面的に行い、医療法人の総務、人事、経理、役所対応などに従事。
医師、看護師、受付スタッフと医療に関わる人々の面白さと、患者様ご紹介の活動でお話ししてきた様々な院長先生とお話しするうち、多くの医院を、事務長的にサポートしたいと思うようになり、2015年2月 S&Sメディカルコンサルタントを創業し、代表に就任。
2021年12月 株式会社S&Sメディカルコンサルタント設立 代表取締役社長に就任
これまでの支援実績は、内科、耳鼻咽喉科、皮膚科、小児科、整形外科、訪問看護ステーション、歯科、美容皮膚科、自費PCR検査センターがある。