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結局、採用に強いクリニックは何をしているのか?【前編】

結局、採用に強いクリニックは何をしているのか?【前編】

コラム

はじめに

 最近スタッフ採用が難しくなってきたとお感じではありませんか。それは、先生のクリニックだけではなく、いろんなクリニックさんからお聞きする声です。採用面接は、履歴書と応募者がいれば、【募集側が準備をしていなくても】成立します。応募者が話をしてくれるのを聞けば、採用面接の形になります。でも、それでは良い人材との出会いは難しくなります。

採用面接もお見合いとお考えください。

お見合いする前に何の準備もせず、ただお会いするだけ、ということはないかと思います。それなりの準備をして、臨むはずです。採用面接も同じです。自分の都合だけ押し付けても、マッチングしません。

だからこそ断言しますが、【準備が大切】です。

集患・増患のマーケティングと同じことだと理解すればいいです。

つまり、

  • 採用の準備がしっかりできている
  • 採用の流れを確立している
  • 時代の変化を意識している

ということになるかと思います。

 さて、「type転職エージェントにてカウンセリングを実施した女性転職者 (2233歳)のアンケート/対象:約6000名」のデータによると、

  •  1位 働き方を改善したい(49.6%)
  •  2位 福利厚生・育休産休が充実した会社にいきたい(25.1%)
  •  3位 スキルアップ・専門性を身に付けたい(15.7%)

このようなアンケート結果があります。

  医療機関に来る応募者がそのままあてはまるかどうか、何とも言えませんが、概ねこのような傾向があるのは、私の経験からも感じます。「働く時間」への改善、将来的なライフプランの見通し、スキルアップ、専門性を身に付けたいと考えるようになってきているとお考えいただければいいかと思います。

人材採用が難しくなってきた背景

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 さて、クリニックの採用が難しくなってきた背景として、いくつか考えられます。

具体的に申し上げますと、

  •  医業収入が上がらず、給与条件を上げづらい
  •  医療機関以外のお仕事の給与が上がってきている
  •  土曜日にお仕事があることが多い

こう見ると、給与・雇用条件ばかりが気になりますが、お仕事内容も大切ですが、そのベースとしてある一定の給与・雇用条件がキープされていることが前提となります。ただ、診療報酬などが上がる可能性に期待することはほぼ不可能なので、売上を確保することが重要となります。給与だけでなく働き方で、マッチングできるようにもしていきましょう。

 また、経験者採用に頼るのも、一定の注意が必要です。人手不足になると、即戦力採用を考えたくなりますが、医療機関は勤務する場所が変われば、やり方も仕事の進め方も全然違うことも多いです。病院で受付していた方が、クリニックで受付として入職したものの、業務の違いに戸惑い、早期退職した例があります。即戦力に飛びつかず、経験が少なくても、会話のキャッチボールが軽く、素直な方のほうがクリニックに合う場合が多いです。なかなか募集しても応募者が少ない時代ですが、だからこそ、応募者を多く集めることよりも、自院にあった方に来てもらえるように、採用の活動を行っていくことが重要と言えます。

 ライバルは他院ではない可能性も

 近年は最低時給の大幅な上昇により、医療機関以外の給与が上がってきていて、総支給額で追いついていない可能性も出てきています。都道府県によっては、最低時給が1000円を超えていて、給与上昇は避けられないです。また新型コロナウイルスの影響で休業していた飲食業、アパレル業など接客業が、採用活動を活発化しております。そのため、給与条件も近隣他院との比較だけでは不十分な場合もあります。午後診の勤務が例えば、16時から19時などの場合、お子さんのお迎えが17時にあると、午前診だけの勤務しかできないので、

 ◆午前診のみしか入れない(例8:30~12:30)

  時給1,100×4時間×3日=13,200円(月額約6万円)

 ◆他職種だと、16時まで入れる(例9:00~16:00(45分休憩))

  時給1,100×6時間15×3日=20,625円(月額約9万円)

このような差になってしまいます。

 では、時給を高くすれば、募集が集まるのかと言えば、そうでもありません。

例えば、しゅふ層をターゲットと考えた場合、扶養範囲内での勤務希望をされる方も多くいます。最低時給が上がっているので、年間の総労働時間が少なくなっています。そのため、未経験者なら時給より、仕事についていけるかどうかを気にする傾向にあります。

  •  未経験でも大丈夫
  •  現スタッフも未経験から始めています
  •  お仕事マニュアル完備しています
  •  先輩が丁寧に指導します

などがキーワードになります。自院の実情にあわせて、ターゲットに合わせて遡及する文章を作ってみてください。

 応募者の心理を読む

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 さて、お仕事探しをしている方の心理を考えてみましょう。
例えば、

「子どもも無事に中学校へ入学できたし、部活動もするみたいで、これからは夜も働けるけど、いいところあるかなあ」と考える看護師さんは、どのような勤務時間、働き方を求めているでしょうか。

「そろそろ彼氏と同棲するし、新年度には新しい地域で仕事探したいなあ」と考える受付事務さんは、どのようなことを重視して、お仕事を探しているでしょうか。

「子どもの塾の送り迎えも増えてきたし、午前だけで、塾代出せるような職場があればいいなあ」と考える診療助手さんは、何を重視して求人情報を見ているでしょうか。

どの方も、それぞれの現在と将来のライフにあわせて、お仕事探しをしていますが、求めるものは変わってくると思いませんか。貴院は、どんな心理の方と、マッチングしそうですか。そして、その心理の方は、どんな媒体でお仕事探しをしていますか。これにより、勤務条件、働き方、募集媒体に関係してきます。

いまやスマートフォンを持つことは当たり前になってきたので、お仕事探しもスマートフォンで探せるウェブ媒体を使うことが主流になってきています。ただ、全部の職種が合うかどうか、断言できません。例えば、院内クリーンスタッフを募集したときは、あえて地域のポスティングにしましたが、ターゲットになる方と出会えて、その方々はいまでも活躍しているという例もあります。ぜひ応募者の心理を読んで、そこから戦略、戦術を立ててみてください。

応募に関する最近の傾向

 最近は応募方法に関して、傾向が変わってきています。

主な例を挙げていきます。

  • 応募にあたっては履歴書を郵送してください

 →郵送代がかかるので応募しません

  • 応募の際、まずはお電話ください

 →誰が出るかわからない電話は無理なので応募しません

  • 応募は採用担当まで

 →誰に話をしたらいいのかわからないので応募しません

以前なら当たり前のように、募集媒体にも書いていたと思いますが、これらが応募のハードルになっている可能性もあります。「応募の電話もできない人なんて、仕事ができるのか」と言いたくなるかもしれませんが、年代によっては、生まれたときから固定電話が家庭にない、という時代に入ってきていますので、電話に慣れていなくて当然です。電話をかけさせる、というハードルで人材を逃すくらいなら、採用してから電話研修を受けてもらい、戦力にしていく方が現実的かと思います。

 

 あとは、最近は、ホームページだけでなく、Instagramなども確認したいという欲求もあり、つまり、院長や先輩の様子を知りたいということになります。「見える化」とよく言いますが、応募者に対しても「見える化」していくことは、大きな効果があると言えます。

 

 ただ、以前、クリニックでブログが流行ったことがありました。クリニックの様子や院長、先輩の様子などもわかるのですが、ほとんどのクリニックでは、ブログ掲載が続いていません。記事掲載するネタに限界が来るからです。また、スタッフが書くとしても、どこまで書いてよいのか、何を書いたらダメなのか、など迷いが生じるので、続かなくなったのです。院長が定期的に情報発信するところは続いているのですが、院長も忙しくなって、なかなか書けない場合もあるかと思いますので、無理せず、ホームページで院長やスタッフの写真を多く載せる、Instagramなど写真中心に感覚的に載せる、というほうが、続きやすいように感じます。情報が古い日付で止まることのないように、無理のない情報発信が、募集にもつながっていきます。

募集媒体・時期の話

 よく聞かれる質問なのですが。「募集媒体はどれが良いですか」というものがあります。結論を申し上げれば、絶対にこれが良いと断言できるものはありません。媒体そのものが大切なのではなく、先ほど申し上げたように、応募してくる方の心理に合わせた媒体を選定すること、できれば複数持っておくことが重要です。時期にもよりますので、いろんな求人媒体を知っておくのは、有効な手段と言えます。

ただ、indeedは無料でも有料でも使えるので、ぜひ求人情報を入れておきましょう。写真、キャッチコピーは絶対必要なので、可能な限り、スタッフの写真を撮影して、使えるようにしておくと良いと思います。

スタッフの中には、サイトに載せる写真は撮られたくない、という方も一定程度います。危機管理や、勤務先がいろんな方に公開される、などの理由です。もちろん無理強いしてもよくないので、その場合は、写真素材サイト(無料もあります)などを活用して、人物中心に使っていただくと良いです。イラストよりも、人の写真、特に働く女性の横顔に目がいきます。いろんな素材を集めてみてください。

クリニックによっては、スタッフ入職時に、写真撮影をして求人媒体に使用する場合があります、とスタッフ一人ひとりに許可をもらっているところもありますので、ご参考になさってください。

 

 募集時期ですが、これもターゲットによって変わってきます。例えば、7月で言えば、常勤スタッフは賞与をもらってから辞めようと考えることもあり、転職に動く時期と言えるのですが、子育て中のパートスタッフは動きにくい時期です。お子さんが夏休みに差し掛かり、お昼ご飯を作る、帰省する準備をする、など、家庭内がバタバタする可能性があります。そんな時期に新しい職場を探す余裕はありません。それぞれの月によって、あるいは常勤かパートかによっても、その心理は変わってきます。募集を始めるにあたり、時期の特徴を読むことも重要です。

面接までの流れを考慮する

 最後に、現在の応募者の流れを考えていきましょう。

概ね、以下のような流れになっています。 

・求職者が、人材募集を見つける
    ↓
・ホームページ、SNS、口コミを探す
    ↓
・家族、友人などに評判を聞く
    ↓
・応募のメールをする(WEB応募する)
    ↓
・面接を受ける

このように、募集情報を見てから応募するまで、いくつものハードルがあります。このハードルを乗り越えてもらわないと、応募に至りませんので、それぞれを乗り越えらえるように対策することが大切です。

まとめ

 いかがでしたか。採用面接にも準備が必要ですが、応募者の心理や現在、将来のライフをどう考えているかなどの観点から、募集に生かすことの重要性をご理解いただけたのではないでしょうか。

 後半のコラムでは、面接とその後のポイントについてお伝えします。

 著者プロフィール

田中 健太
株式会社S&Sメディカルコンサルタント 代表取締役社長

田中健太プロフィール写真.png

2000年3月 京都教育大学 教育学部 欧米言語文化専攻 卒業
1999年3月 株式会社ECC 入社
大学1回生より塾講師、予備校講師として複数の企業に勤務。株式会社ECCでは、非常勤講師で入社し、その後正社員に転換。本部講師人事責任者として、各校舎の講師、事務スタッフなどの採用に従事。採用、育成の面白さに気づき、人事の専門家である社会保険労務士を目指すも、不合格続きで、本格的に採用、育成の仕事を求めて、株式会社ECCを退職。
2009年10月 医療法人hi-mex 入職 医療法人本部責任者(事務長)として、医療機関勤務未経験ながら採用される。医療事務スタッフのサポート(受付、会計、往診同行)を行いながら、医院全般をサポート。その後、分院展開を全面的に行い、医療法人の総務、人事、経理、役所対応などに従事。
医師、看護師、受付スタッフと医療に関わる人々の面白さと、患者様ご紹介の活動でお話ししてきた様々な院長先生とお話しするうち、多くの医院を、事務長的にサポートしたいと思うようになり、2015年2月 S&Sメディカルコンサルタントを創業し、代表に就任。
2021年12月 株式会社S&Sメディカルコンサルタント設立 代表取締役社長に就任
これまでの支援実績は、内科、耳鼻咽喉科、皮膚科、小児科、整形外科、訪問看護ステーション、歯科、美容皮膚科、自費PCR検査センターがある。

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